ラーニング・ティップス作成の試み

ラーニング・ティップス作成の試み

2006.10.12

ラーニング・ティップス作成の試み
〜岡山大学第3回教育改善学生交流ワークショップi*Seeに参加して〜

FD推進プロジェクト・メンバー 高柳俊男(国際文化学部教授)

(岡山大学教育開発センター橋本勝教授の許可を得て転載しています)



 

FD推進センターから、FDに関する催しの案内が、最近メールでよく送られて来ます。普段は授業その他に追われてなかなか参加できませんが、夏休みを利用してひとつ行ってみることにしました。
 選んだのは、岡山大学で9月9日(土)に行なわれた「第3回 教育改善学生交流ワークショップ」。かつて3年前、浜松で開かれた教員対象のFD研修会に参加したことはありますが、こちらは学生が中心となり、学生の立場からよりよい大学教育を目指して運営されるという点で、性格が大きく異なります。
当日、会場に赴くと、FDや授業レベルの向上に関心のある学生や教職員が、全国から大勢集まっていました。なかでも岡山という場所からして、やはり関西から西の大学関係者が多いようです。
午前中はまず、立命館大学や愛媛大学など6つの大学の学生や大学院生から、それぞれの大学における自分たちの活動についての紹介がありました。持ち時間が1大学当たり、報告8分、質疑2分と短く、慌ただしい感は否めませんが、学生の創意工夫による教育改善の取り組みが、各地の大学で開始されつつあるのを知ることができました。
それらの報告を受けて、昼から午後にかけては、課題ごとに小グループ、ないし小グループを複数束ねた大グループに分かれて、討論を進めました。
私はいま法政大学で、FDプロジェクトメンバーの一人として「FDハンドブック」の作成に関わっていますので、それと関係のあるLTの分科会に加わってみました。LTという言葉は、実は初めて聞いたのですが、Learning Tipsの略で、要するに教員の側からする教育改善のヒント集Teaching Tipsのいわば学生版だとのことです。
ここでは、実際にそうしたラーニング・ティップスを作成した岡山大学と長崎大学の例を軸に、議論が進みました。どちらもまだごく最近完成して使われ出したもので、冊子体ないしウェブ上で公開されています。聞くと、先輩たちから後輩たち、とくに入学したての新1年生に送る、授業の受け方、勉強の仕方、あるいは大学生活の送り方などに関するアドバイス集のような感じです。
たとえば、ノートの取り方、レポートの作成方法、テストの準備の仕方などに関するヒントがあります。あるいは「学生による授業評価アンケート」に対する、学生の立場からする感想や不満が述べられています。
また、両大学とも、その大学にちなむキャラクターをいくつか作り、それらの対話形式で話を展開する(ときには方言を駆使して)など、楽しく読める工夫が凝らされています。
もちろんどの大学でも、「シラバス」「履修のてびき」「学生便覧」のような、大学側ないし教員側が公的に作成した冊子が存在しますが、それを学生の立場から噛み砕いて、学生自身の生の声や上級生の体得したノウハウをまじえて伝授しようという試みと言えましょうか。あるいは、ともすれば無味乾燥になりがちな大学側の公的資料と、クチコミやアングラ情報として流される「裏シラバス」の類との、中間あたりに位置するものとみてもいいかもしれません。
そうしたLTを作ろうという学生たちの活動を、大学側が支援しているところが目新しく映ります。もっともこうした試みはまだ始まったばかりで、詳細にみると2つの大学のラーニング・ティップスの性格はやや違いますし、関係学生たちによれば、両大学ともその成果に関してはこれからの分析に待つところが大きいようです。
いずれにしてもFDは、授業を受ける学生あってのものですし、授業と同様、双方向性の中で進んでいくはずのものでしょう。そうしてみれば、よりよい授業や学習環境を作り上げる上で、学生側からなされる積極的な提言や自主的な取り組みを尊重し、ともに手を携えていくことは、もっと重要視されていいように思えます。
幸い本学でも、大学行事を側面から支える学生たちの自主的取り組みが活発で、とくにオープンキャンパスでは学生独自の視点からの活躍が、大いに成果を挙げています。こうした活力をFDにもうまく取り込んで、教員と学生がよりよい授業の実現を目指して切磋琢磨していく関係をつくることを、FD推進センターとして考えてみてもいいのでは、とも感じました。
お土産として、岡山大学のLT冊子を本学用に数部いただいてきました。FD推進センターの蔵書に加えましたので、閲覧していただければと思います。
また両大学のラーニング・ティップスの内容は、以下でも見ることができます。

・岡山大学 http://cfd.cc.okayama-u.ac.jp/stfd/lt/
・長崎大学 http://www.redc.nagasaki-u.ac.jp/fye/public/tips/

実は、昨年度に同じく岡山大学で開催された「第2回 教育改善学生交流ワークショップ」には、法政大学からFDプロジェクトメンバーが4名参加し、後藤篤子センター長による詳細な報告記がこの「イベント・ワークショップ」のページに載っています。
そこで私のこの報告では、重複を避け、まだ耳慣れないラーニング・ティップス作成の試みを中心に、簡単にお伝えしました。

 

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